経済研究

経済対策として安倍内閣は公共事業の拡大を謳っているが、果たしてこれは有効な経済政策と言えるのだろうか。多くの国民が疑問を呈しているように、多額の国債を発行し続けながら公共事業を拡大していくことには大きな不安を感じている。極めて貴重な国民が納めた「血税」だ。少しでも優先順位の高いことに使って欲しいと思うのは当然だろう。

 

ケインズ経済学では「有効需要」の創出のために財政出動を主張したが、今そのような主張をそのまま述べる人は見受けられない。戦後復興期に必要な社会インフラを構築し、社会全体の効率が高められるといった費用対効果が明白であるような公共事業は有効であったと考えられるが、現在の日本においてはそのようなものは多くはない。

 

公共事業の波及効果を期待して何度となく大型予算が組まれたことはあるが、実際目に見えるような経済効果が見られているとは言い難い。事業に使われる予算はその事業に直接関与する人々に配分されていくため、それ以外の人々に与える影響は極めて限定的となる。また、事業が終わるとその経済効果も激減し、経済活動も元の通り低迷しかねない。

 

現在の財政状況を考えると、「コンクリートから人へ」資金は振り向けられていくべきであり、どうしても必要な公共事業は費用対効果を十分に検討し優先順位をつけて最小限に留めるべきとの主張は根強い。公共事業は多くの利権を伴う側面もあり、経済対策として広範に行うといったことは、多くの国民は望んでいない。
先の衆議院選挙で得票率が極めて低く、自民党への風が吹いていなかったことも、以前の自民党政治に戻ることに対し、国民が強いためらいを感じていることを示す、一つの表れなのかも知れない。

アメリカで生活していると、ソーシャルセキュリティナンバーという番号が必要になる。
自分自身の番号であり、納税の時も、銀行で口座を作る時も、小切手を使う時も、自動車
免許と一体となって、ありとあらゆる場面で毎日のように使っている。
日本においても、国民背番号制の是非を巡って随分と長きに亘って議論されてきた。
個人のプライバシーとか、制度に対するセキュリティの問題とか、慎重に対応を検討すべ
き課題はあるだろうが、もはやこのようなマイナンバー制度を導入しないでやっていくこ
とはできないのではないだろうか。
こうした制度を導入するということは、行政の効率化を実現することと多くの場合一致す
る。納税も、年金も、住民票や謄本等も、効率よく行政サービスを提供し、行政サービス
を受けていくためには、このような制度の導入は避けて通れない。
税負担の不公平感を排し、行政の縦割りも是正し、かつ行政コストを削減していくために
も、この制度を早急に取り入れていくことが望まれる。
同時に、これまでに何回も指摘され慎重な議論がなされてきたように、システムに対する
セキュリティと個人情報の扱いが安全に行われるよう最善の注意が払われることが強く望
まれることは言うまでもない。

経済成長を促進していくために、規制緩和をしていくことは極めて重要なことだ。
以前から何回も言われてきている話ではあるが、建築の際の容積率を山手線の内側について、一律に何倍かに引き上げてはどうかといった議論が繰り返される。このようなことは別に山手線の外側でも一向に構わないと思う。もちろん、日照権とか、道路斜線とかいろいろな規制があることは承知している。しかし、重要なことはこれを国土建設省の行政官の論理で決めていくのではなくて、経済政策として政治的判断のもとに行うことなのだ。
マンハッタンを引き合いに出すまでももなく、香港、シンガポール、上海等々、巨大なビルが立ち並ぶ大都市は極めて多くなってきている。建築技術の進歩と、電気屋水道等のインフラの整備の進展で、超高層ビルが林立していくことが可能になった。
東京タワーやスカイツリーから東京の中心地を見ても、未だに低層階のビルがあまりにも多い。

 

仮に容積率を2倍にしても、50囘、60階のビルを立てる会社は増えるだろうし、個人だって2世帯住宅を建てるのに、エレベータ付きの4-5回建てのビルを立てる人は増えるだろう。

 

人間は古代から生産が追いつかなくなると土地を占領し、住民を奴隷として労働にも従事させた。今はそのようなことはできないが、容積率を縦に増やしていくことで、鉄やガラス、コンクリートや内装資材、設備や家具等々膨大な需要が生まれるのだ。そういう方向で経済運営をやっていくのだという政府の方針が出ただけでも関連の株価は急上昇するだろうし、それに伴っての資産効果も出てくると思われる。

 

建築の規制緩和は単に規制緩和のごく一部に過ぎない。以前前川レポートと呼ばれる規制緩和に関するレポートが世に出されたが、このような規制緩和は、行政の効率化を促し、民間の活力を大いに引き出す上で大変重要おなことだと考えている。

48年ぶりに東京で開催されたIMF世銀総会では、世界経済の成長が減速していることに強い危機感が打ち出された。確かに日米欧ともに難しい問題を抱え、中韓を含むアジアや、途上国にも成長に陰りが見えてきている。日本も巨大な財政赤字に加え、高齢化の進展、人口の減少、円高、そして深刻なデフレ問題等にあえいでいる。

 

 

いうまでもなく、日本の経済成長は極めて重要な課題だが、経済成長を政策的に実現させるのはそんなに簡単なことではない。大きな技術革新が次々に起これば大きな経済成長も期待できるのだろうが、そのようなことを「経済政策として」期待することは出来ない。また、日本社会は高齢化が進み、総人口も減少していく過程にあることを考えると、自然体でいけば右肩上がりの経済成長はとても期待できる状況にはない。
このような中で、政府はどのような成長戦略を考えているのだろうか。その指針が明確に見えてこないのは大変残念なことである。成長戦略を官民の、また今回のIMFの委員会のような外国のエコノミストも含め、真剣に議論して明確な指針を作っていくべきだと思う。

 

 

一般論として述べるならば、経済成長を促していくためには、法人や個人事業主の決算を良いものにしていかなくてはならないと考えるべきだろう。すなわち、貸借対照表(BS),損益計算書(PL),そしてキャッシュフロー(CF)を良くしていくということが事業を活性化させ、経済成長をもたらしていくことになる。
家計や労働者の待遇等もよくする必要があるという議論もよく聞くが、家計や労働者等も何らかの企業や事業に属しているわけであり、そうした事業体の決算が良くならずして給与や賞与が良くなるわけもない。
BSを良くするためには資産価格の安定や保有や取引コストの軽減が重要だ。PLを良くするためには、世界一高いといわれる法人税や所得税の減税が必要だ。CFを良くするためには資産価格の安定化策のほか、日銀のもっと積極的な買いオペなども必要なことだと思う。

 

 

そうした観点からすると公共事業の拡大等はそうした事業の受注を受ける一部の人々を潤すにすぎず、マクロの経済政策としてはむしろマイナスの場合の方が多いのではないか。
経済政策の立案としては、上述のように企業等のBS,PL,CFを良くするという観点から政策に筋道を通して行っていくことが望ましいだろう。そうした道筋が見えれば、民間企業や金融機関も同じ方向を見ながら行動することができ、経済成長の実現が行いやすくなると思う。

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