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選挙とその争点

2014年12月17日 | 時事問題

今回(2014年12月14日)の総選挙は、予想通り自民党の圧勝に終った。
しかし、投票率は極めて低く、解散と同時に「何のための解散なのか」が問われ、選挙期間中も盛り上がりを欠けたまま終始した感は否めない。選挙の争点は何か、国民に対し何を問おうとしているのか、非常に見えにくかったと思う。反面、野党の方は解散に対して選挙の準備は十分とは言えず、選挙戦を効果的に戦うことができなかった。
解散は総理の専権事項であり、会期中いつでも解散をすることはできる。しかし、国民の信を問うに際しては、もっと争点を明確にしていく必要があったのではないだろうか。

 

いずれにせよ、与党は衆議院で3分の2の議席を取った。当然集団的自衛権に関する法案が審議され、憲法改正への動きが明白になっていくことだろう。まさに開票当日のテレビにおいて、安倍首相は念願の憲法改正に向かっていく姿勢を語っていた。
アベノミクスが争点だと言っておきながら、公約に書いてあることはすべてが争点だったといってもやはり後出しじゃんけんの感じはぬぐえない。
今回の選挙は、争点が明確でないままに秘密保護法、集団的自衛権、消費税増税、そうして憲法改正の方向まで支持を受けたような感覚が結果として残されつつあるような気がしている。

 

政府は国民に対し、選挙において何を問おうとしているのかより明確にすべきであるし、多数を持てばなおのこと、民意がどうであるか慎重に受け取っていくことが強く望まれるところである。

今回の選挙の争点は安倍首相によれば、「アベノミクス」だという。アベノミクスの是非を問い、それ以外の経済政策があるのかどうかということを繰り返し述べている。

しかし、アベノミクスと呼ばれていることの中身はいったいどのような事なのだろうか。

 

一つには、金融緩和。これは日銀の黒田総裁がとられた思い切った金融緩和策であり、これは大変大きな成果を上げた。民間資金の潤滑化も進み、円高も収まり、資産価格もしっかりとしたものとなり、その結果として実物経済にも資産効果がみられるようになった。これはアメリカにおいてバーナンキ前連邦銀行議長が行った金融緩和と同様、経済全体の安定化、発展のために大変大きな効果があったと言えるだろう。

 

しかし、その他の政策、すなわちアベノミクスで言われている第二、第三の矢、すなわち財政出動と成長戦略はどのような成果を上げているのだろうか。財政出動は、戦後財の希少性が著しかったころは、希少な資源を効果的に使うことで経済全体の起爆剤として効果をもたらしてきたことは事実であろう。しかし、現在の財政状況を見ると、その費用対効果が十分にあるとは言えない状況になってきている。政府の借入金の総額は、約1000兆円にもなっており、日本のGDPの2倍を超えている状況にある。

第3の成長戦略には、岩盤ともいわれる既得権益を打破していく思い切った規制緩和が必要だと叫ばれている中、特区を作る、地方創世のための税制上の恩典を図るといったむしろ官の関与を強めていく議論がなされるなど、成長への明確な道筋が見えない状態が続いているように感じられる。

 

さらに消費税の増税後経済全体が強い懸念を有する状態が続いていることを見ると、何が「アベノミクス」と呼べる経済政策なのか理解しにくい状態にあると国民は感じているのではないだろうか。金融緩和についても、日銀はいつまでも国債を今のペースで買い続けていくことはできない。民間の本格的な成長力による経済の活性化がもたらされるようなマクロ経済政策がとられることが大変期待されるところである。

アメリカの選挙はよくできている、4年に一回の大統領選挙は、社会を挙げ、マスメディアを挙げての最大のイベントとなる。どんな人でもテレビや新聞等を通じ、何が争点となり、何が国民の生活にとって重要か明確な判断材料が示され、マスメディアの取材や全国のキャンペーン等を通じ、国民に対する国を挙げての政治教育が行われることになる。

そういった大々的なキャンペーンやプロパガンダを通じて、国民は経済、税制、軍事、外交、教育、医療、保険、年金等々、様々な分野における共和・民主両党の違いを明確に知ることができるのだ。

さらに大統領の任期途中2年を経たところで中間選挙が行われ、上院の3分の1、および下院の全員が改選される。中間選挙は2年たった大統領の信任を問われるものであり、今月初めに行われた中間選挙ではオバマ大統領は大変厳しい結果を受けたことになる。

 

これに対し、日本の衆議院選挙は内閣総理大臣による解散によるものがほとんどであり、その際、主権者である国民に何を問おうとしているのかその争点が極めて不明確だ。

例えば、アベノミクスが争点といっても、金融緩和なのか、財政出動なのか、規制緩和なのか漠然としすぎていてわからない。消費税が争点といっても、増税が良かったのか、10パーセントを延期したことを問うのか、延期した後に景気弾力条項をなくすことへの信認を取ろうとするのか、国民に問いかけていることが何かまったく明確でない。まして、集団的自衛権や外交問題等についても選挙で勝ちさえすればすべて信任を得たと言えるのだろうか。

今回の選挙には、このように何のための選挙なのか理解できず、多くの批判が寄せられている。政治に対する不信が全く払しょくされていない状況の中、野党の力が見えにくいタイミングに頼って、争点のわからない選挙をしていくことは主権者である国民からすれば、極めて理解しにくいところだ。

日本の選挙制度は、アメリカの選挙制度とかなり違っており、もっと見直していく必要があるのではないだろうか。

アメリカの中間選挙においてオバマ民主党は歴史的な大敗を喫し、上下両院とも過半数を失った。アメリカ経済は決して悪い状況にあるわけではなく、株価も高い水準の中で、政権与党がこれだけの敗北をすることは珍しいことだ。

 

これは、低賃金・格差拡大といった景気を実感できない層からの不人気に加え、アメリカの国際社会における指導力の欠如による面が大きいと思う。

対中国、対ロシア外交に加え、ウクライナ、イスラム国、TPP、エボラ出血熱対策等をはじめとして世界が抱える問題は複雑さを増している。アメリカの指導力の欠如と共にかかる問題が世界的に広がりつつあることは大いに懸念されるところだ。

 

しかし、別の見方からすれば、アメリカは4年に一度の大統領選挙に加え、2年に一度の中間選挙があり、米国民は常に選挙を通じバランスをとる道を選択している。日本においては、衆議院と参議院で過半数が異なるとねじれ国会として異常視されるが、アメリカでは上下両院で過半数を有する政党が異なったり大統領と議会の多数派が異なったりしていることがむしろ状態だ。

 

今後上下両院とも野党が過半数を占めることになり、オバマ大統領も議会への協力を呼び掛けているところだが、大統領、上下両院ともよく議論をし、国際社会の平和や安全のためにしっかりとした貢献を引き続き行ってほしいと願うところである。

「政治とカネ」の問題は、これまでにも繰り返し大きな問題として取り上げられ、そのたびに政治不信を招く大きな問題となっている。これは、公の利益に私の利益を優先する、公務員にはあってはならない忌まわしい由々しき事柄だ。

こうしたことには、1948年に制定された「政治資金規正法」があり、政治団体の収支が義務付けられ、国民に公開されている。しかし一般国民は馴染みは薄く、その実態を精査した経験は決して多くはないであろう。

 

小渕前大臣等関連の政治団体が検察の捜査を受けるような状況にあっては、少なくとも政治資金規正法の対象となる報告については、国民はインターネットでいつでも閲覧できるようにすることが必要であろう。また、報告書の提出にあたっては、本人と会計士、監査法人、弁護士等の捺印もきちんと行うべきで、本人が知らなかったといったことを許さない仕組みが大切だ。領収書等についても、開示されていれば、マスコミも含め、国民はきちんと精査されている状況を確認できるだろう。

 

国政にあずかる者のみならず、地方公共団体の議員たちも透明性を高め、規正法の趣旨にかなうやり方で資金をきちんと管理し、公開を常にわかりやすく行うことを義務付けなくてはならない。

そうした仕組みが早く取り入れられ、二度とこのようなことが起こらないようにすることが極めて急がれる。

金融ファクシミリ新聞社の代表取締役島田一氏が、最近の著書「新共和党宣言」の出版記念会の挨拶で、次のように述べておられた。

 

 

「仮に日本経済に失われた25年が無く、その間に3%ずつ成長していたら」「足元のGDPは1000兆円となり、税収も100兆円になっていました。そしてそうなっていれば、昔と同じように中国と韓国は日本を尊重する態度をとり続けていたはずです。」

 

 

「この25年間は国の借金が4倍に増える一方で、税収はむしろ減少し、一時は25年前の半分近くの税収になってしまいました。明らかにその間のマクロ経済政策の失敗であります。」

 

 

確かに当時はアメリカの5兆ドルのGDPに対し、日本は3兆ドル。中国などははるかに小さい経済規模であったのに、今ではアメリカに大きく水をあけられ、中国にもはるかに追い越されている状態にある。25年間の経済成長率は世界の先進国の中でも最低水準にあるのだ。

 

 

さらに、積極財政の名のもとに行われる公共事業、税収が増えるかどうか疑問の消費税率の引上げ等政府主導の経済政策には、島田氏の指摘するように見直すべき根本的な問題が多く存在すると思う。これまでのような経済政策の失敗を十分に見直し、民間主導の市場経済に根ざした成長を期していく必要があろう。

日本の民主主義は、歴史の中でかなり短い年月しか保たれていない。江戸時代以前は天下をとったものがすべてを決め、民主的な考え方すらなかった。将軍が切腹といえば命でさえ一存で失うことになる。明治、大正時代には、議会ができたり憲法ができたりといったことで民主的な思想はあったのだろうが、充分とはいえない面が強かった。

そうすると、現行憲法が公布され民主主義が定着したと言えるのは戦後の70年間位ということなのだろう。

独裁国家はもとよりのこと、共産主義国家や社会主義国家においては基本的人権の尊重が十分でなかったり、情報の開示が十分でなかったりするケースがほとんどだ。それは為政者にとって不利な情報を開示すれば様々な批判や異なった意見が続出し政権を維持することが困難になるため、情報をコントロールすることが社会主義体制を維持していくための条件となるからだ。

民主主義においては、正確な情報をできる限り開示し、民意を実現するために国民の声を十分に聴く最大の努力をするのは当然である。政府は学級委員と同様に生徒たちの声を十分に聴いた上で、クラスのメンバーと一緒に問題に対処していく必要があるのだ。

消費税増税の問題にせよ、集団的自衛権の問題にせよ、国のあり方にかかわる重要問題について、幅広く国民の声を聞く姿勢を、強く意識しなくてはならないと思う。

香港が2017年に行われる行政長官選挙を巡り、大きく揺れている。選挙が誰でも立候補できて、有権者は誰でも自由に投票できる、民主的な選挙となるのか、事実上中央政府が認めた中央政府寄りの人物のみしか立候補できない制度となるのかは、決定的に異なる。民主主義や市場経済に長期にわたってしっかり定着している香港市民にとっては、この自由経済を死守しなくてはならないという思いは極めて強いであろうし、逆に中央政府にとっては、ここで民主化を事実上容認してしまえば、中央政府そのものの根幹を揺るがすことにもなりかねない。そういった観点からして、双方ともに絶対に譲れないところがあるのだろう。

その間にも香港ハンセンの株式市場は急落している。世界をリードする市場の一つである香港市場が不安に包まれていくことは、世界経済にとっても由々しきことだ。

民主的な国家であれば、香港が今後どのような社会、経済体制をとっていくべきか民意を問いその世論を尊重していくのであろうが、中央政府が主導権を維持していく国家においては別の論理が優先されるということなのだろう。

錦織選手の活躍に、日本中どころか世界中の人々が沸いている。

9月6日、全米オープン準決勝で世界ランク1位のジョコビッチに快勝し、世界中の人々から驚きと称賛の声が上がっている。

もう数年前になるが、まだ今ほど有名ではなかった錦織と対戦したフェデラーが、その勝利インタビューの中で錦織を絶賛し、「彼は将来世界のベスト10、いやベスト5以内に必ず入るだろう」と言っていたが、それどころか今や世界のトップ選手になろうとしている。「ベスト10」を「ベスト5」と言い直していた意味がよくわかるような気がする。

錦織選手のすごいところはその技術力もさることながら、誰に臆することもなく自分の力を最大限発揮できるところだろう。「勝てない選手はいなくなった」と公言するのも、本当にそう信じているからだろうし、相手が世界ランキング1位の相手でも、精神的にたじろぐ雰囲気はない。対戦を見ているとむしろジョコビッチの方が追いつめられているような感じを受けたのは筆者ばかりではないだろう。

いよいよ全米オープンの決勝だ。

世界中のファンが息をつめて注目する中、そのたぐいまれな才能と努力、そして強い自信をもって、素晴らしい栄冠を手にしてくれることを心から期待している。

本日、新しい内閣の陣容が定まり、新内閣がスタートする。

 

政治記者ではない筆者が新内閣の性格等について評論することはできないが、麻生財務相、菅官房長官、甘利経済再生相、岸田外務相、太田国交相、下村文科相ら、主要6閣僚は留任するので、基本的にはこれからも安倍首相の施策が維持されていくことになるのだと思う。

 

 

今後この内閣において、集団的自衛権の憲法解釈変更にかかる関連法改正、消費税率の2回目、10%への引き上げ、拉致問題、経済対策、TPP、来年度予算の作成、その他外交、防衛等々、数多くの難問に立ち向かっていくことになる。新内閣には是非とも一部の業界の利益や既得権にとらわれることなく、すべての国民の利益が公平にもたらされるよう、「公の立場」を十分肝に入れて頑張ってほしいと願うところである。 また、多くの国民が嘆くことは、新政権に対抗しうる政治勢力がないことだ。 自民党政権が続いていた頃を思い起こせば、自民党には数多くの派閥が存在し、派閥間でし烈な議論が行われていた。民主党政権が自民党に圧勝したときには国民は熱烈にそれを迎えた。 しかし、民主党の政権に大きな失望を見せられて以来、今は対抗馬を見出すことすらできないでいる。今後様々な問題に十分な判断材料と議論をもたらし、賢い判断をしていくためにも、野党の活躍は大変重要なことだと思う。国民の野党に対する期待も大変大きなものがあると思う。

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